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新たな“楽器の道”を伝える。ギター職人がこの場所から奏でる音とは?

 

 会った瞬間、取材する前にも関わらず、ギターが好きだという熱い思いが伝わってきた。その人は、美濃加茂市で「VINCENT」というギターの企画販売を行う小川浩司さんだ。

 全国一とも言われるギター製作会社「ヤイリギター」で働くため、長崎県から岐阜県美濃加茂市に移住した。そこで約20年もの間ギターを作っていた彼は、ある問題を目の当たりにすることになる。それは大好きなギターショップが全国的に減少していることだ。

 このままでは、ギターに興味を持ってくれた人が、実際にギターを見て触わって、一つひとつの楽器の物語を聞いて選ぶ場所がなくなってしまう。そう感じた彼は、長年続けてきたギター職人を辞め、買いたい人とギターを繋げる会社を立ち上げた。

 周囲に意図を理解してもらうのに何年もかかったという小川さんの話から、これまでとこれからの思いを紐解いていく。

Q. ギター職人を志したのはなぜだったんですか?

 「ものを作りたい」という思いからですかね。木工が好きだったんです。だから、職人になりたくて、高校を卒業してから、長崎から東京に出て、ギター製作学校に2年間通いました。

 それで、そのあと岐阜県可児市にある「ヤイリギター」に入ったんです。地元の人はあんまり知らないけど、手作りギターの日本一大きな会社がヤイリギターなんですよ。

 入社3年目で初めて1人で全工程をやって1本のギターを作った時は、すごくうれしかったのを覚えています。

 

Q. ヤイリギターではどんなことをされていらっしゃったんですか?

 20年間で様々な工程を担当しました。ヤイリギターは1工程1人という分業制で作っていて、1人休むとそのあとの工程が止まってしまうんですよね。ヤイリで作られたギターであれば、自分のやった部分は、「ここは僕が作業しました」って今も言えます(笑)。

 

 あとは、アーティストのオーダーギターの製作を監修したり、ギターメンテナンス・リペアを請け負ったりしていました。
そのつながりもあって、独立してからもアーティストと色々なことができるのが強みですね。美濃加茂のイベントにもアーティストを呼んだりして、関わらせてもらっています。

Q. ギター職人を辞めて、現在は、「ギターの企画販売」をされているということですが、具体的にはどのようなことをされているのか、教えていただけますか?

 

 プロデューサーみたいな立場ですかね。分かりやすくいうと、野球でいう監督業ですね。以前は選手をやっていたけれど今は現役を辞めて、自分が全体を見て考えたものをみんなに作ってもらっているという。
 色んな工程の制作技術を学んでいくうちに、全体が見えるようになったので、そういうことをやりたいなと思うようになったんです。

 具体的にやっていることとしては、製品企画やデザインです。相談に来られた一般の方やプロのミュージシャンに合わせてギターをデザインしています。

 企画販売をはじめてから、人とつながったり自分が動いたりする時間が増えましたね。

Q. 職人から、「直接人に会って売る」ということをやろうと思ったのはなぜなんでしょうか?

 

 現在音楽業界では、何十とあった楽器の問屋業の経営が成り立たなくなっていて、全国の楽器屋さんの数も、この10年で半分になってしまったんです。
 「楽器屋さんがなくなると、買う側の人が、人と相談してギターを買える場所がなくなってしまう」。そうした声をよく聞くようになったんです。
 いいものや趣味のものは、納得して買いたいという人たちの思いもあるので、元職人が販売の部分で関われたら面白いんじゃないかと思って、今に至ります。

 ヤイリは、84年の歴史がありますが、その歴史の中でも僕みたいな人間は初めてみたいです(笑)。今は、元職人がやるなら安心して任せられるという信頼関係があるのですが、最初はなかなか理解してもらえなかったですね。
 楽器屋さんからも僕が何をやってるのか理解してもらえなくて、何年もかけて僕がやっていることを説明してきました。

Q. 企画販売の仕事をはじめて、よかったことは何でしょうか?

 会社の決められた製品を作るのではなく、自分の作りたいギターのアイデアがあって、それを製品化できることですね。それは、よかったというか、やりがいかなと思います。
 自分の企画したモデルを良いと言ってもらえた時は、正直にうれしいです。

 

Q. どんなお客さんがいらっしゃるんですか?

 北海道から南は竹富島まで、全国にたくさんのお客さんがいるのでありがたいです。

 例えば、これからギターをはじめたいっていう左利きの中学生のお父さんから発注があったり、実際にプロミュージシャンからの依頼もあったりします。
 ギターを持つ人のライフスタイルや活用方法は、それぞれ違うので、僕はそうした人たちに合わせてどんなギターがいいのか提案しているんです。

 

Q. VINCENTという屋号の由来を教えてください。

 もともと、VINCENT(ヴィンセント)さんという人の名前なんです。僕はその名前の人に縁があったり、VINCENTというバイクや曲が好きだったりして…。

 「自分がもし外国人だったら、この名前だったかも」と思うほど愛着があります。

Q.美濃加茂を暮らしの拠点として選んだ理由を教えてください。」

 13年前に、隣町の可児市から美濃加茂に移り住んだんです。正直、可児に住んでた時は美濃加茂のことはあまり知らなかったんですけど、土地を探している時に、美濃加茂のまちを色々みました。

 まちの歴史や成り立ちから、まちとして好きになったのが理由ですかね。

 

Q.美濃加茂のいいところって何でしょうか?」

 とくに……(笑)。でも、住みやすいですね。びっくりしたのは外国人の多さです。
 あと、美濃加茂ってまちの規模がコンパクトで、色んなことをするのに動きがはやい街だから、色々やりやすいんですよね。もともとの土地の人が多く、ほかのまちと比べると地元のことを考える熱量がすごいなって思います。

 

Q.今後の目標を教えてください。また、どうやって美濃加茂にかかわっていきたいのかもあれば。」

 地場産業が少ない美濃加茂市って、僕のような「作り手ではなくブランディングのような間を創造する立場の人」がこれからが増えてくると思うし、そうなるといいなって思います。
 「名古屋から1時間の距離だからこそできることはある」という、自分自身が色んな方たちのお手本になれたらいいなって思います。

 

Q.最後に、小川さんにとってギターとは何でしょうか?」

 人生を豊かにするものですね。ギターに触れずに、生涯を終える人は多いと思うんです。でも、知らない人や弾かない人は損しているんじゃないかなと思います(笑)。
人生を豊かにするものを作れていることが、僕自身のやりがいでもありますね。

 

 

【プロフィール】

小川浩司さん

1975年、長崎県生まれ。 1997()ヤイリギター入社。ヤイリギター在職中にはアーティストリレーション担当として(以下敬称略)仲井戸'CHABO'麗市、山口洋(HEATWAVE)、宮沢和史(ex.THE BOOM) SION、久保田麻琴、ハナレグミ、岸田繁(くるり)、浜端ヨウヘイ、高木克(Soul Flower Union)、 サンタラ、オワリカラ、ラブハンドルズ、中村マサトシ(THE YOUTH) Donal LunnyAndy IrvineNikola ParovRens van der Zalmなどのオーダーギターの製作を監修。その他、多くのアーティストのギターメンテナンス・リペアを請け負ってきた。2016 ()ヤイリギター退職、ギターの企画販売をする「VINCENT」を開業。

【インフォメーション】

VINCENT 
岐阜県美濃加茂市牧野1751-20
tel & fax : 0574-27-2748
mail : info
vincent-guitar.net
営業時間:10:0013:00 / 15:0019:00
定休日:火(その他臨時休業あり)
HP
https://www.vincent-guitar.net/
*販売店舗ではないため、事前にご連絡の上、お越しください。