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美濃加茂市との出会いから5年。3,000坪からはじまる「地域再生拠点」

 まちづくりコーディネーターとして名古屋から美濃加茂市に移住してきた加藤慎康さんは、最近、美濃加茂市に3,000坪の土地を買い、草刈りに葛藤する日々だという。

 

 まちをキャンパスに見立て誰もが学べる「大ナゴヤ大学」を開校した経歴を持つ加藤さん。名古屋のまちを舞台にさまざまなプロジェクトやイベントを仕掛けてきた中で、2014年ごろ、美濃加茂市及び周辺地域のイメージについてのヒアリングで声をかけられ、「みのかも定住自立圏構想 共生ビジョン懇談会の委員就任の要請を受けたことから、単に会議の時だけに行くだけではなく、地域のことをより知ろうと何度も通い続けることになった。名古屋まで車で1時間というアクセスの良さや、ほどよく田舎で、ほどよく便利な美濃加茂市や周辺地域の魅力にいつのまにか惹きつけられていったという。

 2016年、美濃加茂市の特定任期付職員(まちづくりコーディネーター)に就任し、美濃加茂市のまちづくり協議会の設立準備や美濃加茂の暮らしを紹介するウェブサイト「みのかも時間」を立ち上げるなど、地域活動に貢献してきた。今年の3月でまちづくりコーディネーターを退職したあと、美濃加茂市の山中に土地を買ったそうだ。何を思って購入を決断したのか。加藤さんの持つこれからのビジョンについてお話を聞いた。

 

Q.「大ナゴヤ大学」とはどんな取り組みだったのでしょうか?

 名古屋のまちやその半径100キロ以内の人たちが一緒になって学び、地域に関心をもってもらおうという取り組みです。

 校舎のない学校でしたが、誰もががフラットに参加でき、普段からも立ち寄れるように、まち中に学食やキャンパスをつくろうとしていました。地域そのものが学びの場になることで、「学ぶことはどこでもできるんだ」ということが伝えたかったです。

 

Q. 今年の3月にまちづくりコーディネーターを退職されたあと、どのような活動をされようとしているんですか?

 2016年の4月から、20193月まで、美濃加茂でまちづくりコーディネーターの仕事をさせてもらって、やりがいもありめちゃめちゃ楽しかったんですけど、その分課題もたくさんみえてきました。最終的に、まちづくりに象徴されるように立ち上げ段階はうまくいっても、次の人をどうするかと継続のためのお金の課題ですね。地域活動やボランティア、里山再生などに本来必要なお金が回る仕組みをどう作っていこうかということと、一般に市民や団体が行政と連携して事業を通じた地域づくりをしていくには難しい課題がいくつかある、ということに着目しました。

 まず1つ目に考えたのは、市民立の地域電力会社をつくることです。今は大手電力会社と契約している方たちや企業・工場・公共施設などが電気の契約をこの企業に切り替えることによって、応援したい団体への寄付や地域づくりの基金としてまちづくりを持続可能にしていく資金の流れをつくります。美濃加茂市では、家、役所、工場などで年間80億~100億円の電気代が外にいってしまっているんですね。少しでもいいから、そこから、まちづくり協議会や自治会サロンなどの運営費に毎年定期的に入金ができたり、応援したいNPOに寄付したりする仕組みをつくろうと「木曽三川電力みのかも」という会社を起業しました。

 2つ目は、行政、企業、民間をつなげていく会社です。具体的には「まちづくりラボ」・「地域商社」・「公民連携」の文脈で、行政と民間の間に入り、地域課題の対処や観光インバウンド対応などの機能を洗練させて、独自に地域内の資源循環や外貨獲得の機会・関係人口の創出を目的に、「カモケンラボ」という会社を立ち上げました。インバウンド観光では、美濃加茂市の「地域商社」として、今後3年間「美濃加茂市インバウンド推進による外国人材との共生と共創のまちづくり業務」という国の地方創生交付金事業の委託先として、今後の取り組みをおこなうほか、「里山」を活用した新たな学びの場づくり・企業との連携の場づくりなどを「里山×STEAM minokamo2030」というプロジェクトを行政・森林組合などとともに取り組みます。9月末には、元Google米国副社長で日本のAIのトップランナーの村上憲郎さん、奈良で伝統野菜や里山再生をつうじた農家レストランなどの地方創生に取り組まれている「プロジェクト粟」三浦雅之さんをお招きして、この「里山×STEAM MINOKAMO2030」のキックオフフォーラムをおこなったところです。

Q. 美濃加茂市内に土地を購入されたと聞きましたが、どのよう場所なのでしょうか?

 美濃加茂市の蜂屋地区で3,000坪(一万平米)の広さがある豊かな場所です。空き家バンクに問い合わせでオーナーさんが来て下さったので知ったんですけど、あまりに広過ぎて、誰も手にしようとされていませんでした。ちょうど私が手を挙げる直前に外国の方が購入したいということで依頼が入ったそうでしたが、畑や山を雑種地に切り替えたいという要望だったそうで、「それではせっかくの美濃加茂の里山がなくなってしまう」と意を決し購入することにしました。築60年で手入れが行き届いておりまだまだ住みつづけることができます。その土地には十分な広さの畑と山があって、鳥やヤギを飼うことができます。

Q. 今そこでは何をしようとしているんですか?

 

 もともと里山だったので、そこに色んな地域の人々に訪れてもらえる場所にしたいと思って、今は山の整備と草刈をしています。

 「里山×STEAM minokamo2030プロジェクト」を具体的に紹介させていただくと、里山体験を子どもたちに実践し観察してもらうことによって、彼らの好奇心や問題意識を寄せるような関心の契機となるような教育プログラムを行い、里山の叡智、プログラミング学習を通じたアプローチのおこなえる教育の拠点にしたいと思っています。小学校の高学年から高校生・大学生を対象にして、サイエンス、テクノロジーを教室ではなく里山で学んでもらいたいと思っています。それから、企業など色んな領域のゲストを呼んで、学んでもらいたいなと思います。

 大学生になると、美濃加茂市を出ていってしまう子も多いけれど、「トランスナショナル」という概念で日本国内でも海外でも活躍していつかこのまちに戻ってきてもらうような教育を考えています。

Q. 将来的に目指すところはどこでしょう?

 美濃加茂市が拠点となって、地域のお金が循環するとともに「再生エネルギー100%」、炭素循環のモデル都市になっていけたらよいなと考えています。今はまず電力と里山資源を通じた資源循環から、様々な団体や仲間・行政とはじめますが、もう少し広い「みのかも定住自立圏」などの広さで広域の交易市場と新製品開発が生まれるような循環の地域にするようにできないかなと。

 また、現在「シンヤス村」という仮称のままになっていますが、このような過ごせる場所を同じコンセプトで美濃加茂市発で全国や世界に作れたらいいなと思っています。私の周りに全国・海外に暮らすみなさんが普通に遊びに来れたり拠点間を行き来できる「マザー拠点=美濃加茂」になるような。そして、関わる人たちがどこでも好きなエリアで働けるようにできたらいいですね。

 

 

 

 

【プロフィール】

加藤慎康さん/大ナゴヤ大学初代学長、元・特定任期付職員(美濃加茂市まちづくりコーディネーター)、

現:木曽三川電力株式会社 代表、合同会社カモケンラボ 代表、美濃加茂市まちづくりコーディネーター

成城大学経済学部卒業後、リンナイ株式会社に入社。2009年、まちをキャンパスに見立て誰もが学べる「大ナゴヤ大学」を開校。2013年「名古屋テレビ塔株式会社」入社。100m道路を活用した社会実験を行う。奈良にて農業を学ぶ傍ら、中山間地の課題を学ぶ。2016年より美濃加茂市に移住。2019年、市内蜂屋町に土地付きの一軒家を購入し、日々の暮らしから、移住に求めること、そして都市と周辺エリアの理想的なつながりを追及している。

【インフォメーション】

木曽三川電力みのかも株式会社

岐阜県美濃加茂市蜂屋町中蜂屋1327番地
HPhttp://kiso3e.com/

 

合同会社カモケンラボ

岐阜県美濃加茂市蜂屋町中蜂屋1327番地
HP合同会社カモケンラボ (kamokenlab.com)

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