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古民家DIYをして自然の移り変わりを楽しみながら暮らす。

 取材当日は梅雨時で、しとしとと雨が降り続く日だった。蜂屋川に沿って山之上方面に向かう途中にある明治30年建築の古民家に到着すると、阿曽藍人さんが傘を差して出迎えてくれた。

 車から降りて軒先で挨拶を交わした後、広い土間のある玄関から和室に上がり取材の準備をしていると、奥さんの麻友さんが台所から飲み物を持って現れた。

 「裏で採れた梅をジュースにしてみたんです。季節ごとに近所の方が『梅の実が生ったよ』『桑の実が生ったよ』って教えてくれるんですよ」

 空き家バンク制度を利用してこの物件に住み始めてからもう少しで1年が経とうとしていた阿曽さんご夫妻は、自然豊かな周辺環境を楽しみながら、地域の方とも関わりを持って暮らしているようだった。

 インタビュー前に少し口を潤そうと手作りの梅ジュースを口に含むと、自然な甘さのさっぱりとした味わいでとても美味しかった。

 今回、インタビューを受けてくださったのは阿曽藍人さん・麻友さんご夫妻。令和2年の夏に空き家バンク制度を利用して多治見市から美濃加茂市に移住されたご夫婦である。

 

物件の裏で採れた梅で作ったジュース

 

「Q.以前は多治見市にお住まいだったと聞いていますが、美濃加茂市に移住を検討されたのは何故ですか?」

 はじめは美濃加茂に限定していた訳ではなくて、多治見にある職場の通勤1時間圏内で探していました。その範囲で空き家バンク制度がある自治体を探して、その中のひとつが美濃加茂市でした。

 多治見に住んでいた時も古い家に住んでいたんですが、割と市街地で、人が密集したようなところで暮らしていました。ですが、もう少し自然に囲まれた環境で焼き物の制作をしながら暮らしたいという気持ちがずっとあり、探していたんです。

 美濃加茂とのご縁は、2011年の「きそがわ日和」に参加したことがきっかけだったと思います。夫婦で何度も訪れる機会があって、きれいな木曽川が近くに流れていて心地よくて、訪れる度にいい思い出を作っていけたんです。なんとなく「ここに住めたらな」という思いが生まれていきました。

 最初に出会ったのはきそがわ日和の小川さんでした。きそがわ日和に何度か参加させてもらって、親しくさせてもらっていたんです。あの頃はまだお店も少なかったですが、最近はスタンスが違うお店が「スタンスが違う」ということで統一感を出していて、なんかいい感じですよね。

 

阿曽さんご夫妻

「Q.空き家バンクではどういったタイプを探していたんですか?」

 焼き物を制作できる工房のスペースが取れるような家を探していました。あとは焼き物を制作するときに煙を出しても大丈夫そうなところですかね。それに夫婦お互いが現地に行った時に、わくわくするような家ですね。

 ふたりとも古い家に憧れがあって、そういうところに住みたいなという思いはありました。古ければ古いほどいいなという価値観がふたりにあったので新築で家を建てるって気持ちもあんまりなくて、自分たちで直せる範囲の家を直しながら住みたいなって考えていたから空き家バンクはうってつけでした。

 この家の決め手となったのは、実は屋根なんですよ。これまで色々と古民家を探してきた中で、ネックになる部分って屋根の状態や雨漏りなんですよ。屋根ばかりは自分たちでは直せないので、業者の方にお願いすることになるんですが、費用の桁も段違いで……

 今住んでいる物件は屋根がしっかりしていて、瓦の状態も良かったんです。見たところ雨漏りもなさそうで、屋根が大丈夫ならまあ何とかなるかなって。

 

「Q.入居までの行政のサポートはいかがでしたか?」

 いやもうありがたかったです。貸主の方と直接やりとりすべきかなってところも丁寧に間に入っていただき、色々とスムーズに話が進んだこともありましたし。さすがに契約部分は市の紹介を受けて不動産事業者に入っていただきましたが、そこまでは丁寧なサポートに心強かったです。

 当時、2名体制で来ていただいて、一人は地元在住の職員で地域の様子を、もう一人からは法的な考え方や客観的な見方を教えていただけ、異なる視点からお話を聞けたのがとてもありがたかったです。

 最初は不思議でした(笑) 地元在住の職員さんは作業着で、もう一人はスーツだったので、作業着の方はこの辺りの地域の方で心配して見に来てくださったのかと思ってて。でも実は職員さんで。

 あとは、引っ越しして知らない場所に行くこと自体は結構面白いなってわくわくしていたんですが、移住することによってその地域のコミュニティの雰囲気とか関係性に対しての不安はちょっとだけありましたね。

 地域行事はどれだけあるんだろうとか、飲み会とかあるのかなとか、入ってみないと分からない部分もあるので、少し心配でした。

 

「Q.この家は明治建築で大変古いですが、直した部分やリノベーションした部分はありますか?」

 令和2年の8月中旬に賃貸借契約だったんですが、契約前の7月から立ち入りを承諾してもらって、台所の床を作らせてもらいました。玄関から続く土間だったんですが、冬とか寒くて厳しそうだし、溜まっていた埃も舞い上がりそうだったので、全部水洗いして、10センチぐらいの高さで床を作りました。それが一番大きな改修ですかね。

 自分でやってみたんですよ。初めてだったんですが、youtubeとかで動画を見たり本を読んだりしてチャレンジしてみました。

 正直結構大変でしたね(笑)湿気が上がってこないように耐水性のセメントを練って板の間の木材の下に敷いてみたり、工具も一通り揃えてみたりしました。

 

 あとは奥の和室をフローリングに改修したんですよ。10畳の和室だったんですけど、畳が少し傷んでいたので、全部はがしてみました。

 これは妻が最初は一人で一生懸命進めていたんですが、終盤はなかなかやる気が出なかったみたいで……フローリングを張るばかりにしてしばらく放置していたんですよ。最後の一歩はふたりでやって完成しました。今は洋室として利用しています。

 仕上げの板の寸法を整えてはめ込んでいくのって難しいのかなって、動画とかを見てもあんまり理解ができなくて、まあやってみるかって微調整しながらやってみたら意外とほぼぴったりとおさまっちゃいました(笑)

 自分で手をかけられると愛着が湧きますね。この床は自分たちで作ったんだなーって。もっといろいろとチャレンジしてみたいですね。たとえば壁の部分を塗り替えるとか。漆喰にするのか、土壁を出していくのか、まだ考え中ですけど、日常の暮らしのこともあるのでまだ手が回っていないですね。

 

 そういえば、この家はよく日が入る縁側があるので結構暑くて、ちょうど先週、すだれを取り付けたんですよ。そうしたら風情がすごく良くて。日も防げながら気持ち良い風が通り抜けるので、これぞ「日本の夏」みたいな感じになって、とても満足しています。

 それと工房の方は、荷物を整理したぐらいで、特に建物自体は改修していないですが、窯とか道具は持ち込みましたね。

 家具等がたくさん残っていたので、もちろん仏壇や大きな家具で大切なものは所有者の方に持っていってもらいましたけど、引き取って利用しているものもあります。細かなもので所有者の方が不要だったものは処分しました。いざ片付けようと思うと本当にいろんな物が出てきましたね。

 

「Q.美濃加茂市で暮らして、地域コミュニティとのつながりはいかがですか?」

 よく活動に参加しているのは里山整備隊ですかね。引っ越してきてからすぐに参加させていただきました。妻も一緒に。ここ1年は地域のお祭りや集会も中止になっていて、地域の方と関わる機会そのものがあまりなくて……

 でもありがたいことに、草や木は必ず茂ってくるので里山整備隊の活動はちゃんとあって、そこで地域の方とお会いできるので、自己紹介のようなことができているのかなと。月に1回、よく草が伸びる時期は月に2回ぐらいの活動ですが、妻も竹を切ったりするのが好きで、よく2人で参加しています。

 自分がやっている焼き物の制作にとってもありがたいことに、伐採した木を分けていただけるんですよ。薪として使わせていただいて、僕としてはすごくありがたいですし、地域の方も持って行ってくれるのみたいな感じで。

 あとは地域での暮らしで言うと、僕は普段仕事で日中は家にいないことが多いので、妻が庭や畑に出て作業をしているとよく声をかけられるみたいです。

 今でこそ散歩中のご夫婦とかに、「おはようございます」って挨拶をされたりするんですが、引っ越してきて初めの頃はあまりなかったんですよ。でも1ヶ月2ヶ月と暮らすうちに段々馴染んできたのか声をかけてくださる方が増えていって。庭木がぼさぼさになっていたら、通りすがりに近所の方が剪定の仕方を教えてくださったり、隣の方に畑のやり方を教わったり耕運機を貸してくださったり、使い方とともに荒れ地を耕してくださったりして、色々と知らないことを教えてくださったり助けてくださったりしていただいています。

 購入すると結構高価なので、機械をお貸しいただけるのはありがたかったです。使い方も知れるし。

 最近だと、庭先で焼き物を焼いていると、物珍しいのか「何してるの?」って興味津々で。毎日散歩しているご夫婦とかは大体毎日同じような時間に散歩をされているので、僕も同じような時間に焼き物をしていることが多いので、やっぱり出会うんですよ。「今日はどんなの焼けたの」って最近は楽しみにされているようです。

 賃貸で住んでいるんですが、今も大家さんとの関わりも続いているんですよ。借りる前に物件を見学するときに何度かお会いしたんですが、明るい方で、お話のきっかけづくりをしてくださってとても親しみやすい方でした。最初に対面した時、すごく安心しましたね。

 大家さんは、まだ美濃加茂で柿をはじめ田畑のお世話があって敷地内の倉庫の一部を使うこともあるので、6月ごろから秋にかけてはよく来られますよ。ちょっとした会話を交わしたり、野菜をいただいたり、逆に妻がマルベリー(桑の実)のジャムを作っているのでそれを差し上げたりして交流が続いています。お互いの作物を交換するみたいでちょっと面白い関係性だなと思っています。

 そういった面もありながら、大家さんも気を遣ってくださってる部分もあって、貸主という立場で所有権は大家さんにあるんですが、来る前にはちゃんと連絡をくださったり、こちらの生活に踏み込んで来ようとしなかったり、お互いの領域を尊重してくださっているように感じます。なのでそういう関係性でいられるのはよかったなと。

 

「Q.焼き物の制作や私生活等での今後の展望とかはありますか?」

 展覧会の話をしたいなと思うんですが、みのかも文化の森で個展があるんですよ。9月25日から1ヶ月ぐらいなんですが、広い展示室や周辺の森を使って。

 美濃加茂市に来て約1年なんですが、ちょうどそのようなタイミングで展覧会を開催できるようになって、それが地域に対する何か発信になるかなと思い、今準備を頑張っているところです。ぜひ地域の方にも見に来てほしいなと思っていますし、ワークショップや工房見学もあるので、新たな関わりを持てたらとも思います。

 

 あと暮らしとしては、四季を見ながら暮らしていきたいなと思っています。季節によって生えてくる植物が違ったり、土の中で休む人と咲く人と、そういった移り変わりがあるんだなって感じて、観察していると結構面白いんですよ。背の高い草を刈ったら、下から元気にクローバーが生えてきて植生が変わったり。

 この時期だとおたまじゃくしがカエルになりかけているタイミングで、ちっちゃいかわいいのが跳んでいるんですよ。生き物や植物を見ていると面白いです。まだ見ているだけですが、いつかそういうのを季節ごとにまとめられたらなって思います。

 生き物の音とか気配もすごいですよ。それこそ最近は夜とかカエルの鳴き声がすごい。段々慣れてはくるんですけどね。

 周りに田んぼがあることもありますが、庭の池にもいるんですよ。ちっちゃなトノサマガエルが3匹ぐらい。ちっちゃくても鳴き声は大きいですよ。

 でも無音の日もあって。全然今日は鳴かないなって思うこともありますが、1匹が鳴き始めると急に周りのカエルも鳴き出すんですよ。

 美濃加茂に住んで、外に出て、川にホタルが出てそれを見たりとか夜空の月を眺めるだとか、そういった時間が増えましたね。夜にわざわざ外に出てぷらーっとしてみたり。

 トイレが外にあるので、必ず外に出ないといけないんですよ。そのついでにちょっと景色を楽しんでいます。朝とか夕方とか時間によっても変わるし、きれいだし気持ちがいい。

 そういう季節の移り変わりみたいなことを求めていたなーって、住んでから実感するようになりましたね。

物件の前に並ぶ阿曽さんご夫妻

 

 取材を終える頃、雨音が弱くなっていた。

 古民家を自分たちで直したり、自然の移り変わりを楽しんだりと、美濃加茂での暮らしを楽しんでいるおふたりとのお話は面白く、あっという間に時間が過ぎていった。

 10月から始まるみのかも文化の森での展覧会にも足を運んでみようと思う。

 

美濃加茂市民ミュージアム 現代美術レジデンスプログラム

阿曽藍人 Inner Land 内なる大地へ

会期:2021.10.1(fri)~10.31(sun)

「芸術と自然」をテーマにした現代美術の 展覧会。今年度は美濃加茂へ移住し、制作 活動を展開する阿曽藍人さん(1983 年~)を 紹介します。作家は素材として陶土を使い ます。土そのものの質感を生かしたシンプ ルな形体の作品を並べ置くことで、特異な 空間を作り上げます。室内と敷地の森の環 境を生かした展示を試みます。

関連企画:

①アーティスト・トーク 10/31(sun)11:00~12:00

②工房見学 10/9(sat)10:00~12:00

③ワークショップ「文化の森の土で陶板をつくる」 10/10(sun)10:00~16:00

詳細はみのかも文化の森ホームページ(以下のリンク)をご確認ください。

http://www.forest.minokamo.gifu.jp/tenrankai/2021/2021_06.cfm

 

【プロフィール】

阿曽藍人さん/教職員・陶芸家

奈良県出身、美濃加茂市在住。
2009年 金沢美術工芸大学大学院修士課程 美術工芸研究科陶磁コース修了
2010年 常滑市立陶芸研究所 修了
2016年 多治見市で制作を開始
2020年 美濃加茂市に移住

野焼きという手法を用いて土器制作をしており、土の素材感を見せる造形的な作品を手掛けている。

陶板を制作する阿曽さん

【主な個展】

2010年 ノリタケの森ギャラリー/名古屋(2011、12、13、13、14、15、16年)
2012年 Galeria Punto/加古川
2015年 ギャラリー芽楽/名古屋
2019年 ギャラリーうつわノート/川越(2021年)
2020年 GALLARY crossing/美濃加茂
2020年 水犀/東京
2021年 美濃加茂市民ミュージアムみのかも文化の森/美濃加茂

 

【主な展覧会】

2010年 BIWAKO BIENNALE 2010(近江八幡市旧市街)
2011年 きそがわ日和2011(祐泉寺/美濃加茂)
2013年 アート・プログラム「施美時間」(鶴林寺/兵庫)
2015年 愛知ノート -土・陶・風土・記憶(愛知県陶磁器美術館)
2015年 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015(新潟)
2016年 きそがわ日和 本陣の庭から(美濃加茂)
2016年 土の冒険のぼうけん(岐阜県現代陶芸美術館)
2020年 Modern Japan Craft Exhibition(Public Record/ニュージーランド)
2021年 土からはじまる(とうしん美濃陶芸美術館/多治見)
2021年 日本当代陶器展|YAKIMONO 焼物(游牧画廊/中国)

 

※8月の取材のため、本文中では会期を「9月25日から」と表記していますが、コロナ禍の影響で10月1日からに会期が変更となったためチラシ等の画像については会期を差し替えております。

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