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まちづくり名人が語る、「はじめの一歩」としての美濃加茂市。

※この記事は、岐阜大学地域協学センターとの連携事業である地域系インターンシップに参加した学生のみなさんが実際に現地で取材し、記事を書きました。(文:岐阜大学 栢之間、福井、増田、安田、山田)

 

 2019年、蜂屋に3,000坪の土地(里山)を買った加藤 慎康(かとう しんやす)さんは、この土地を活用したまちづくりのために、奔走する日々を過ごしているという。

2009年に「大ナゴヤ大学」を開校した経歴を持つ加藤さん。その後、2016年に美濃加茂市に移住し、2019年までの3年間は、市のまちづくりコーディネーターを勤めあげた。任期満了後は、美濃加茂市蜂屋町の3,000坪の耕作放棄地であった土地を空き家バンクの制度を利用して取得し、現在は里山を活用したリトリート(※1)や、国の地方創生テレワーク交付金を活用した美濃加茂市のサテライトオフィス運営事業にも手を挙げ、ワーケーション研修に向けた整備に(※2)に力を入れている。

「さまざまな表情を持つ、岐阜県の縮図のような美濃加茂市に魅了された」という加藤さん。3,000坪という広大な土地をまちづくりのベースにし、これから何に挑戦しようとしているのか。まちづくりに一歩踏み出せない人にもできることを含め、これからについてお話を聞いた。

【前回の記事はこちら

美濃加茂市との出会いから5年。3,000坪からはじまる「地域再生拠点」

 

Q. 前回の『みのかも時間』では、購入された3,000坪の土地の草刈りをしているということでしたが、現在はどのような感じですか?」

草刈りは現在も継続していますね。現在はヤギを飼っています。そのヤギ達が草を食べてくれるようになったので、ヤギ達の食べた糞がまた土壌に戻るという循環が生まれ、土壌も自然も豊かになりました。あと、3年前に設立した合同会社カモケンラボの雇用により人数が増えたことで、そのスタッフの中から自然農法で畑を再生していくことにチャレンジできるようになりました。この2つで環境が良くなり、初夏には蛍が見られるようにもなりました。この場所に有志の人たちが集い、「ランドスケープ(景観)デザイン」と「耕す」ことを併せて「タガヤスケープ」という活動や、市の里山整講座と連携した「テクテクチクリン」という活動も生まれています。

現在のシンヤス村

Q. ここまで里山に大きく力を入れている理由は何ですか?」

大きく2つありますね。1つは美濃加茂の自然の素晴らしさに気がついたことです。ここには、杉・ヒノキなどの針葉樹ではなく、コナラやアベマキなどの広葉樹などが生息する雑木林が広がっていてさまざまな生物が存在します。その環境保全を生業にする人材を育成し、豊かな里山の環境をみんなで理解することで里山が守られていくのだと思います。また都市圏の方にとっても、こういった環境は価値が高いというのも感じています。

もう1つは、そんな里山が現在、人手不足によって崩壊の危機にあるということです。里山は元々人の手が多く入ることによって保全されてきました。ですが、若い方がいろんな理由で都市部へ流出しているので、人の手が入らなくなり、竹が繁殖してしまっています。こういうこともあって。今までの里山の整備方法を知り、里山の課題・高齢化に対応できるような策を考案し、人材育成ができるような場として「里山×STEAM MINOKAMO2030」を行っています。

 

Q. まちづくりに参加しようと思われたきっかけは何ですか?」

初めは、まちづくりに興味はなかったですよ。ただ、大学3年生のときに、阪神淡路大震災のボランティアに参加して、自分のまちを「想う」人に出会いました。こういう人がたくさんいたら、そのまちは素敵だなとは思いましたね。

社会人のときも同様にまちづくりとか全然考えていなかったです(笑)。でも、働いているうちに、「あ、オレ、生き方おかしいよな」ってすごい思うきっかけがあって。何がやりたいのか考えました。人材育成とか、自分のまちに関わることをやりたいなって。

最初は「学校」を作りたいなって思って、「大ナゴヤ大学」っていう民間版の生涯学習をコミュニティの中で生み出す学校を作りました。そこで、まちの人たちとたくさん関わって、考えに触れて、色々取り組んで、やっぱり大切なのは「人」だなって思いましたね。

そこで、そういう人たちが元気に暮らすために、自分がお役立ちできることはあるかなって思わされて。そういうことがあって、まちづくりに徐々に参画していきましたね。

加藤慎康さん

Q. 3年前の記事の段階で計画されていたことの進み具合を教えてください。」

本当に残念ながら、コロナのせいと言っちゃいかんですけど、ほぼ進みませんでした。特に外国人市民の方たちと、当時進めていた「インバウンド」の基盤整備を一緒にやろうと計画していたことが、ぜんぜん機能しなかったですね。会社の方は、コロナの他にもビジネスモデルの陳腐化や情勢の変化、技術革新もあって状況も厳しくなり、当時考えていた事業をいま取捨選択して、模索しているところです。

やっぱり集まるのができなくなったって大きいですね。私の得意分野は人を集めることだったので、得意技を奪われたみたいな感じです()

駅前周辺も人通りがだいぶ減りましたしね。オンラインで配信とかもしてますけど、顔を見てお話しする機会が、圧倒的に減りました。

逆にコロナだから出来たことで言うと、市長選を機に「Good for MINOKAMO」っていうボランティアグループを作って、市民アンケートをとって、それを候補者お二人にぶつけるという企画を、「まちベンチ美濃太田ラボ」にて対談形式で配信させていただきました。「市民が分断するのではないか」という危機感から始めたことでしたが、オンラインの画面やスマホを介して、一人だけでなく家族みんなで内容を観たりとかして、視聴者数以上にみんな観てくれていたっていうか。これまで、市長選や選挙の機会に候補者の思いや考えを議論する場が無かったので、それを用意できたのはよかったです。

あと、もう1個進みました。美濃加茂市が「SDGs未来都市」の採択を受けまして、その一環で「みのかもSDGs推進協議会」っていうのができ、「地域内循環」をテーマにする活動の当初はアドバイザーをさせていただきました。それが徐々にですが形になってきました。

市長選候補者を招いた公開トーク「Good for MINOKAMO ~未来のためにできること~」

Q. 加藤さんが考える美濃加茂市独自の良さはなんですか?」

美濃加茂のまちは面白いです。ここの皆さんは外部からの人を受け容れることができ、ノリが良くて楽しい方がたくさんいらっしゃいます。美濃加茂市南部は人口が多く、北部は過疎が問題になっているエリアがあります。そして木曽川と飛騨川がぶつかり大きな流れになる場所でもあり、また山、川、里山という広大なアクティビティとしても魅力的なスポットがいくつかあります。だからいろんなエリアで表情が違ってみえる、本当に豊かなまちだと思います。

美濃加茂市 川で遊ぶ子供たち

 

移住に関しては、例えば美濃加茂市の三和地区でいうと、「小規模特認校」として子どもの人数が少ないからこそできる教育があるってことで、それを知った都会の子どもへの教育に熱心なご家族など「住みたいっ!」ていう人も出てきています。

また市内南エリアでは外国人の方が結構移住してきているんですけど、レストランを作ったり、ユニークなお店も生まれたりだんだん面白い場所になってきています。先輩の移住者がいると移住者にとっても安心ができ、やっぱり住みやすいですよね。

あとはつながるスピード感ですね。まちの人たちを信じて何かやってみれば、みんなサッとつながって応援してくれる。例えば、高校生の子が、地域のおじいちゃんおばあちゃんに育ててもらうような子供の遊び場を作りたいって相談に来たんです。そしたら、じゃああの人につなげてここの場所を借りてそれをやろうって言って。新聞社に伝え記事にしていただいたところ、「何日にやります」って書いていただいたら、もう記事を読んだ人たちがみんなドーンって集まって来て大賑わいの場になりました。 あれ準備を含めると二週間くらいでできたんですけれども。そういうことができる環境が、美濃加茂の良さかなと思っていまして。つながる速度感っていうか、それが1人じゃなくて、多岐にわたっている。有機的に、すごいゴソッとつながっている。これがあるのがいいなって思いますね。

高校生が考案したイベントの様子

Q. 最後に、美濃加茂市に興味を持ってくださった方へメッセージをお願いします!」

美濃加茂は、「はじめの一歩がやりやすいまち」かなと思っています。このまちには力を貸してくれる人たちがいっぱいいるので、誰かに何かやりたいって言ったら、高速でみんなつながる。そういうスピード感が美濃加茂の良いところなので、叶えてみたかったことをやってみたらいいんじゃないでしょうか。ここをファーストステップのまちとして経験してもらって、あとは自分のしっくりくる場所を見つけて、何かにチャレンジをしてもらえればいいなと思っていますね。

インタビュー風景

 

【プロフィール】

加藤慎康さん
・大ナゴヤ大学初代学長、元美濃加茂市まちづくりコーディネーター(特定任期付職員)
・現:木曽三川電力株式会社 代表、合同会社カモケンラボ 代表

 成城大学経済学部卒業後、リンナイ株式会社に入社。2009年「大ナゴヤ大学」を開校。2013年、「名古屋テレビ塔株式会社」入社。その後、奈良にて農業を学ぶ傍ら、中山間地の課題を学ぶ。2016年より美濃加茂市に移住。2019年、市内蜂屋町に農地や山付きの一軒家を購入した。現在は里山の課題解決に尽力している。

 

【インフォメーション】

加藤慎康さん
Twitter @shinyasukato
Facebook @shinyasu
Instagram @shinyasukato

木曽三川電力みのかも株式会社

岐阜県美濃加茂市蜂屋町中蜂屋1327番地
HP
http://kiso3e.com/

 

合同会社カモケンラボ

岐阜県美濃加茂市蜂屋町中蜂屋1327番地
HP:https://kamokenlab.com/

 

【注釈】

(※1リトリート;日常を離れ自分だけの時間を過ごす場所

(※2ワーケーションWorkVacationを併せた造語。旅先でリフレッシュしながらリモートワークをすること

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